ITゼネコンとIT土方

就職活動中の後輩と話をしていて日本のIT業界って腐ってるよねって話になりました。日本のIT業界はITゼネコンやIT土方と揶揄されることが多いように、平均年収ランキング上位に載る様な一部の超大手企業が仕事を生み出し、それをグループの子会社に発注します。そしてさらにその子会社は協力会社と呼ばれる下請けの会社に発注し、さらにその下、またまたその下の5次請け、6次請けの会社まで存在し多重下請け構造と呼ばれます。そして下の方は納期に追われ社員が過労死するような過酷な労働条件で働き、高卒、専門卒、派遣社員が中心のIT土方と呼ばれるのです。

だから多くの大卒情報系の学生はITの中でもできるだけ大手を目指すことになります。いわゆる上流SEと呼ばれるSEですが、この場合SEといってもプログラミングをすることはまずありません。どちらかと言えば営業やコンサルに近い仕事が中心で調整能力や人の管理能力などが求められます。今日話をしていた後輩も非常に優秀な学生でプログラミングが好きで手を動かす仕事がしたい反面、大手で安定した仕事がしたいという希望があり、こういう優秀で現場にいれば確実に大きな戦力になる学生ほど日本では全く違う職種につくというのが現状です。ここがプログラマーと言えば尊敬される職人と扱われるアメリカや欧米と決定的に違う点で、日本でIT産業が停滞している主な原因だと思います。

だからIT業界、SEはやばい職業だけど大手なら安心だよね、上流SEならプログラミングしなくていいもんね、って話が普通にされるし、優秀な人ほどIT技術の最先端には関わらないので技術革新も生まれにくく、下の方は悲惨な状況になり日本のIT業界の土壌は腐っていると言われるのです。プログラム経験豊富で得意な高学歴ほどプログラマーにはならないという日本の不思議。スーツとギークとか言われるやつですか。

んで何が言いたかったかというと、前回のウェブエンジニアという生き方の続きを書きたかったのです。あ、ちなみにうちの会社は全て自社開発なのでWeb系会社はITゼネコン構造とはまた少し違います。ITに片足突っ込むという意味ではそれなりに危険なわけですが。

『ウェブ時代をゆく』の著者談があったので紹介します。
【著者に聞きたい】梅田望夫さん『ウェブ時代をゆく』
【引用始まり】 —  「シリコンバレーに引きこもって1年半、書き上げるのに2000時間以上かかりました。2万件以上の感想をすべて読みましたから」
(中略)
 「日本の若い人たち、まじめで優秀な人たちが、未来に不安と閉塞(へいそく)感を抱いています。こんな豊かな国、私たちの世代よりも豊かなのにです。これはおかしいぞ、と思いました。時代と日本の社会があっていない。昔の流儀の大人たちと若い人との価値観に明らかに齟齬(そご)がある」【引用終わり】 —

2万件以上の感想ってぼくの感想も読んだのかなと思ったわけです。
ウェブ進化論(の~たいとる)
ウェブ進化論はほんとにたまたま本屋で見つけて読んだのですが、この本を読んでなかったらWeb企業で働きたいと思ったかどうか分からないし、そういう意味では人生に大きく影響を与えた本ということになります。

ぼくみたいに人に影響を受けやすい人は話の一面だけを捉えてすぐに絶賛してしまう傾向がありますけど、当然中には批判的な意見を持つ人もいるわけでそういう意見もあるというのを素直に受け止めることも大事かなとは思います。
ウェブ時代をゆく(池田信夫 blog)
【引用始まり】 — こういう日本の現実は、著者の目には入らないのだろうか。あるいは、そういう現実を無視して「オプティミズム」だけを語ることが営業上得策だから、そうしているのだろうか(コンサルというのは会社の悪口を言ってはいけないと聞いたことがある)。こんな陳腐な「ウェブ人生論」に多くの若者が支持を寄せるのも、カルトのようで気持ちが悪い。救いのない現実から「あちら側」の世界に逃避する信者を作り出しているとすれば、著者の罪は江原氏より深い。【引用終わり】 —
確かに梅田さんの考え方は超ポジティブ思考であり、ITゼネコンのような日本の現状がある限り技術者出身でもない筆者のそれは机上の空論なのかもしれません。技術も人も育たない、サービスも生まれない、未来はそんなに明るくないのかもしれません。

けれど、ざっと検索してみると勇気付けられている人もたくさんいました。
「ウェブ時代をゆく」に激しく共感する。(mab’s MemoBlog)
「ウェブ時代をゆく」梅田望夫(小野和俊のブログ)
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (宇都出ブックセンター)

勇気付けられるという表現はそもそもネガティブな現状を前提としているのでよくないかもしれませんが、仕事と人生について考えさせられる本ではあると思います。今日話した後輩はWebに全く興味がなくて社会のインフラ作りや裏方の方に興味があるようで、ぼくとは考え方や志向が違うのでそれはそれでいいと思います。ただ、企業を選ぶ基準が「終身雇用」や「福利厚生」が一番だと言っていたのは気になりました。本書でもそのことについて少し触れられています。

【引用始まり】 — 「時代の変わり目」を意識して一番気をつけなければならないのは、優等生たちだ。優等生とは、古い仕組みの中でも、もっとも適応できてきた人たちだから「一身にしてニ生を生きる」くらいガラッと変わった世界に、突然四十歳か四十五歳くらいで投げ出されてみると、いちばんに淘汰される可能性がある。ここ数年、積極的に日本の若い人たちと接する時間を増やしていて思うのは、優等生ほど心の中に「古い価値観」がきちんと刷り込まれているということだ。逆に言えば「古い価値観」を信じることができたから「いい学校へ、いい大会社へ」という「人生のレール」なるものを走ることができ、いまここで起きている大変化からも冷静に距離を置くことができているのかもしれない。別に明日から何もかもをがらりと変える必要はないが、「古い価値観」を少しずつでも疑ってかかるといい。【引用終わり】 —

お金や生活はもちろんプライオリテイーの上位に位置するものではありますが、最上位にはなり得ないものだとぼくは思っています。ちなみに大企業で生きるための覚悟として本書では

【引用始まり】 — 自分が「大組織のプロ」になるまでは「その会社がちゃんとサバイバルしてくれるという側に自分は賭けているのだ」と自覚を持つことだ。【引用終わり】 —

と記されています。少し前にキリン、協和発酵買収で交渉の記事でキリン麦酒が協和発酵という大企業を買収したという話を書きましたが、業界人の話によると協和発酵では大リストラが始まったそうです。数年後ですら何がどうなるかなんて誰にも分からない時代です。ましてや終身雇用(笑)や福利厚生(笑)ですよ。

そーいえば本書に出てくる「Vantage point](バンテージ・ポイント=見晴らしのいい場所)とはシリコンバレーの投資家ロジャー・マクナミーの言葉ですが、去年mixiの社長に会った時にも同じ言葉を何度も使っていました。その分野の中で一番見晴らしの良い場所に行くことはすごく大事なことだと思います。

4 件のコメント

  • [就寝雇用]
    福利厚生は必要かと。。個人的に。

    終身雇用は逆にイヤですね。
    特に田舎にあって、あまり外に出れなさそうな会社では。

  • [ainekoへ]
    福利厚生ないよりはあったほうがいいのは確かだけど、流れ的にどこも廃止の方向だから福利厚生が充実してることを理由に選んだら後悔するかもしれないよってお話。そういう基準で選ぶ人は転職にも懐疑的だろうし。

  • [そうですね]
    う~ん。確かにそういう状況かも知れないですね。
    IT系は終電で帰れない超過労働、ヘタすると小さなところは雇用、労災さえまともにつけない福利厚生ゼロ。

    プログラマーの友人がなぜか多いですが
    10年のうちにほぼ全員、その職を辞めて別の仕事に就いてるのも過酷さが窺い知れます。
    そして、大手企業に勤めていた人が少なくないのも過酷さを連想させます。
    唯一辞めてないプログラマーは世界的な大手企業で打ち上げロケットのプログラムなどを組んでいるようですがそれでも何日も家に帰らずデスクの下で寝袋に入って眠ったりもしてるようで口癖は「辞めたい」。友人の夫なんですが全然家に帰れないと思うよって結婚するときに言われたそうです。

    たくやんさんが言われるとおり、みんな優秀なプログラマーだった人です。育たない、継続できない土壌が育たないってよくないことですね。尊敬できる職種であるべきです。

  • [mariaさんへ]
    ぼくの友人にもSEが多いですが、そこまで悲惨な状況はあまり聞いたことがないので会社と部署による部分はやはり大きいのだと思います。しかし、もっと全体的に待遇とイメージをよくしないと状況はこれから、ますます悪くなっていく一方ですね。

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