面白法人カヤックさんの主催する人事勉強会に参加してきました。その名も僕はAKB48に人事部を作りたい #シアター型勉強会 #面白法人カヤックです。
すごく面白い勉強会だったので内容を軽く整理してみたいと思います。
AKB48と面白法人カヤックは似ている
なぜAKB48が今回題材なのかというところですが、主催者の方がアイドルオタクというのもあるみたいです。それプラス、今回主催の面白法人カヤックさんとAKB48は歴史や規模感が似ているということでした。
- 規模感・・・グループ全体で数百人
- 設立・・・2005年
- 業績・・・低迷中
というわけで似ている組織ということなんですが、最近勢いのある乃木坂はまだメンバーが43人しかいないので、その規模だとまだ人事は必要なくて、人数が100人を超えてくると人事必要だよねということで、今回AKB48が題材として選ばれたようです。
AKB48にはこんな問題がありそうです。
- 次世代エースと呼ばれる存在がきちんと育成できていない
- 休職する人が増えてきてきた
- 退職率(卒業率)が増加してきている
- 選抜(メンバーの評価)が固定化されてきていて、下の人達のキャリアやモチベーションが出てこない
こういう会社っていっぱいあるよねということで、組織の共通した課題をどうやって解決していくのかということについて議論しようという勉強会でした。
アイドルグループの一期生はなぜ活躍するのか
AKBも15年活動してきて、売れていない時代から成長期、安定期、停滞期とステージが変化してきました。それぞれのステージで入ってくるメンバーのマインドやモチベーションが異なります。
成長期はそれぞれのメンバーに夢があり、試行錯誤と逆境に耐えてきたメンバーたちです。この人達はアイドルグループの成功は自分たちの成功であり、急成長を遂げる中で潤沢な修羅場経験を経てきています。組織でのリーダーシップの開発論ではリーダーには修羅場経験が絶対に必要だと言われています。リーダーや上に上がっていく人は過剰な責任を与えられる中で能力が開花します。
アイドルで言えば自分たちだけでチケットを売らなければいけないみたいな状況です。自分自身が成長するため、常に修行している状況になります。これは結果的に必ずしも能力が向上したかどうかよりも、あいつは頑張って成長した、変わった、成功したという周りの評価が変わるというのがここでいう修羅場経験の(学術的な)意味だそうです。
一方、アイドルグループが売れて安定期に入ると、今度はAKBに入ること自体が目的になるメンバーというのも出てきます。彼女たちにとって入った時点でゴール達成しているので、最初から数万人のファンがいる状態であることもあり、頑張る意味がなくモチベーションが上がりません。
モチベーションをあげるために1つは修羅場経験を意図的に作っていくということも大事でしょう。 もう一つは個人として内発的動機づけをどう作っていくが大事で、モチベーションをあげるために必要な要素は3つあり
- 好奇心
- 夢
- コントローラブル
です。3つめのコントーラブルというのは、なにをすればファンが喜ぶのか、コンサートのチケットが売れて席が埋まるのか、それが自分の努力とどう結びついているのかということです。つまり得たい結果を自分の努力でコントロールすることができるという実感があるかどうか、それが頑張る必要のない状況の中で頑張らせるために最も必要なことだそうです。
さらに仕事におけるエンゲージメントではJDRモデルというのが有名で、組織から何を要求されているのかという点と、自分はなにができるのかという点、ここがマッチしていないとモチベーションは生まれないそうで、組織からの要求が過剰すぎるとバーンアウトしてしまうということが知られており、身の丈にあった活躍というのも大事そうです。いきなりセンターとかやらされるとつらそう。
これらはすごく会社でも当てはまって、ベンチャーから大企業になっていく会社のフェーズでも同じことが起きてるよなーと思いました。
次世代エースはどうやって育てることができるのか
AKB48には今16期生までいるそうで16期生はコアなファンによると「1期生と同じ匂いがする」と評され評判が良いそうです。この16期生が今までのパッとしなかった世代と何が違うのかと分析すると、16期生はまず人数が多いそうです。そして人数が多いから16期生だけで曲を出したりライブをしたりということが可能だったそうで、16期単独ライブみたいな企画が始まりました。
そうなると16期生たちは自分たちだけでライブのチケットを買ってくれる人たちを集めないといけない状況になり、そこで覚悟と成長が生まれ、今までの世代にはなかった次期エースの匂いがしているというとのことでした。
これは先程のあえて意図的に修羅場経験を積ませるという意味で人材育成の手法だなと思いました。
次世代のエースは現役エースに育て紹介させる
これは乃木坂の例ですが、白石麻衣や西野七瀬といった一期生の絶対的エースがいる状態で、次に売り出したい次世代エースとして以前2期生を売り出したことがあったそうです。ただ、そこで運営側がやり方を失敗して、急に出てきた次世代エースにファンから反発が起きてしまい、結果的に育てることができなかったということでした。
そこで学んだ運営は、今度は次世代エースを売り出すときに、白石麻衣や西野七瀬と組ませて、必ず一緒にイベントやテレビ番組に出て、彼女たちに次世代エース候補を絶賛させるという手法をとったそうです。そうすると、ファンからみたら自分たちの推しが支持する次世代エース候補を否定することは、推しの否定になるので、今度は批判されることなく次世代エースが育ったという話でした。
これは企業でも営業の引き継ぎとかで、「社内で厳選に厳選を重ねた一番優秀な後輩が引き継ぐことになったのでよろしくお願いします」というような紹介の仕方をすることがありますが、そういう現役エースに紹介させるというやり方は面白いなと思いました。
AKBらしさとは?企業文化の継承方法
もう一つ、組織の課題になりがちな文化の継承についてです。 例えば50年以上続くリクルートでも経営ボードが頻繁に自分らしさとは何かを金と時間を使って徹底的に議論するそうです。それくらい自分たちらしさは大事で、逆に言えばそれ以外は全て変えて良いということです。この何を変えないで何を変えるのかということが経営ですね。
この組織のらしさについて、学術用語では組織への適応、組織社会化と呼ぶそうです。 AKBですと、新しく加入したメンバーはAKBの何を理解する必要があるのかというと、
- 文化
- 役割
- 技能
ただ、ここで問題になってくるのが人数とアイドルという特性です。 一般的に人数が多くなりすぎると関係の質というのは高めるのが難しくなります。1人の人数が関与できる人は6人が限界(上司がみれるメンバーの数)と言われており、6人以上になるとマネジメントするのが難しくなりチームのパフォーマンスが下がるそうです。アイドルグループはチーム制だったりもしますが、大所帯なので管理が難しそうです。
また、もっと問題なのが教育という概念がアイドルグループに通じるのかという部分です。 教育とは他者を真似ることですが、アイドルが果たしてそれでいいのかという問題です。アイドルという個性が求められる職業で、他者の成功体験をなぞるだけでは成功しないのは当然で、そう考えると何らかの行動指針、行動評価が必要になってきそうです。
他にもアイドルグループの中で上下関係はどう作るかという問題があります。一般的にはアイドルは新人ほど若さという先天的価値を持っています。また、新しいキャラという武器も持っており、やる気もあります。つまり新人は入った時点で既存メンバーからすると強者なのです。売れていない人気のない先輩が指導しても言うことは聞かないでしょう。LMXが成り立たないのでレポートラインの作り方が難しいのです。
また組織論的観点でいうと、文化に対してファンが過剰に適応している、文化中毒という状態です。古参のファンが昔から好きなので、好きなグループにあまり変わってほしくないと思っていて、前を向かず過去の成功体験に捕われている状態です。これは企業でいうイノベーションのジレンマ状態です。
アイドルグループも新しく変わっていかないとビジネス的な成功はできないことが分かっている一方で、ファンが過去を支持してしまっている状態になってしまっています。長く価値を提供し続けていきたいのにファンが価値を殺しにかかっている、これは非常にまずい状態と言えそうです。
まとめ
この勉強会、非常に面白かったのですが、AKBに起きている組織的問題の認識は高まりましたが、実際の我々の企業の中での組織的課題をどうやって解決していくのかという部分まで話す時間が足りなかったというか、そこまで短い時間で踏み込むのは難しいよなと思いました。
主催者によるとAKBグループは最近、グループの独立採算制を取り出したりして、いろんな問題もある中で「もうまじでやばい」状態だそうです。すごく面白い勉強会でした。