【2020新春読書レビュー】最近読んで良かったマネジメントやビジネススキル系の本

先月と今月で読んだ本のレビューを簡単に書いていきたいと思います。

誰がアパレルを殺すのか

[itemlink post_id="11318"] ファッションアパレル不況と言われて久しいですが、その根本的原因は何なのか。 これを読むと如何にこの数十年間、日本のアパレル業界は自業自得な状態を作ってきたのかということがよく分かります。

  • 根幹をなす服作りを当時人件費の安かった中国のOEM企業、商社に丸投げ委託して完成したものから自分たちのブランドタグをつけるだけのメーカーになってしまった
  • <li>中国の人件費が高騰してきたけど代わりとなる国は輸送費や輸送時間を考えると代替とならない</li>
    
    <li>国内の縫製工場も衰退し、服を企画する力も社内からなくなり、服を作れないブランドになった</li>
    
    <li>日本で売っている服はすべて中国でも手に入る状態、日本の服は中国で売られている服の二番煎じに成り下がってしまった</li>
    
    <li>販売員を低賃金で使い捨て続けてきたのでブラックなのが知れ渡って誰も就職したがらなくなり販売力が低下している</li></ul>
    

    などなどアパレル業界全体が抱えてきた数十年間の問題がいまの状況を生んでいるんだなと理解できました。

    最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

    [itemlink post_id="11319"] すごくいい本でした。星4つ。 何が良かったかというと特に前半で、組織の継続的な成功には優れたマネージャーとリーダーの存在が極めて重要であるが、マネージャーとリーダーではその役割と責務、秀でるために必要な才能も全く異なる、出発点からそもそも異なると書かれていて、それぞれ詳細に具体的な例を交えて説明されていてとても分かりやすかったところです。昨今、人の能力や才能にはほとんど差はなくて訓練すれば誰でもある程度のスキルは後天的に身につけることができるという考えが主流な気がしますが、この本では確かに経験や訓練で補える部分もあるが、核となる資質や才能がなければ卓越した業績は残せないという考えのもと書かれていて興味深かったです。 マネージャーとリーダーの違いをそれぞれ一言ずつで言うと、優れたマネージャーのもっとも重要な職務は、仕事の質を保つことでも、顧客サービスを徹底させることでも、基準を定めることでも、高い業績のチームを作ることでもなく、出発点は部下一人ひとりの才能であり、その才能を業績に結びつける方法を見つけ出すこと、それが優れたマネージャーの仕事だと書かれています。個人と企業の間の触媒として働くような人です。 一方、有能なリーダーは情熱的である必要はなく、魅力的である必要もなく、才気あふれる親しみやすい人物でなくてもよくて、弁舌にたけている必要もなく、ただ明確であればいいと書かれています。我々が誰のために働くのかを明確に示す、我々の核となる強みはどこにあるのか明確に示す、我々が今日どんな行動をとるべきなのかを明確に示す、そうすることで我々がより良い未来を実現させるために行動できる、そんな風に導く人物だということでした。リーダーとは現状に満足せず常に不満を覚え、より良い未来とのギャップを埋めるために行動し、未知のものに対する怖れを未来を信じる気持ちに変えることができるような人です。 確かにどっちも必要で、リーダーとマネージャーの違いをあまり深く考えたことがなかったので勉強になりました。そう考えるとうちの会社の管理職はリーダーという名前ですが、そこにはどんな意味が込められどんな役割や責務を期待されているのだろうと思いました。

    1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え

    [itemlink post_id="11320"] アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者。ジョブズの師であると同時に、グーグル創業者たちを育て上げ、アマゾンのベゾスを苦境から救った伝説の存在。などなど輝かしい成果を残したレジェンド、ビル・キャンベルが生前どういう人だったのか、彼のコーチングの技術がいかに優れていたのかということが延々と書かれています。そのエピソードの数々から本当にすごい人物だったのだろうということはとても伝わってきました。ただ、本書は本人が書いているわけではないので、彼はこんな時にこんなことを言った、違う場面ではこういうことがあってこういうことを言っていた、という話がずっと続き、ビルの人生を伝記として伝えたいのか、経営者としての振る舞い方やコーチングの技術として考え方を伝えたいのか、おそらくそのどちらもなんでしょうが、少し中途半端な本になってしまっているように感じました。ハリウッド映画にもなりそうな人物だなと思いました。

    ザ・ファシリテーター

    [itemlink post_id="11321"] 年々ファシリテートしないといけない場面が増えているのでスキルアップしていきたく読んでみました。 ファシリテーションの技術を説明するために小説風になっていて読みやすいです。ストーリーとしては、マーケティング部門のリーダーだった黒沢涼子が畑違いの製品開発センター長に抜擢され、専門知識面でも年齢でも自分を上回る男性の部下を率い、組織を変えていくというお話です。単なる会議のファシリテーション技術というよりは、組織全体の変革を進めていくためのグループでの問題解決スキル、と表現すると陳腐ですが、どんな立場の人も経験したことのあるような場面がたくさんあり参考になると思います。例えば「煮詰まり気味な会議」「紛糾する会議」「誰もしゃべらない会議」とかです。 物語としてはすごく面白い小説になっているのですが、主人公の黒沢涼子のファシリテーション技術が高すぎて1回読んだだけで身につけるなんて不可能なレベルでした。ただ、高いファシリテーション技術とはこういうものだということを理解する意味では非常に勉強になりました。 個人的に刺さった部分としては、組織を変革するには上から言われたからやるのではない、社員一人ひとりの自発的な行動が必要で、トップダウンではなくボトムアップの提案がされるような内発的動機づけを如何に行わせるかが大事、ノルマではなくチャレンジの対象だと思わせ続けることが必要という部分で、それを具体的にどうやったらいいのかということが物語の中で明らかになっていったところです。 また、フォースフィールドアナリシスという聞き慣れない言葉が出てきましたが、これは何かを実行しようとしたときに「推進力(追い風)」と「抵抗力(向かい風)」があり、それぞれに対する対策を考えることで実行力を高めるというフレームワークです。うちの会社でよく問題としてあがるような「リモートワークの浸透が進んでいないチームがある」とか「青山と幕張の間でのコミュニケーション不足や文化の違い」みたいなところも、ちゃんとフレームワークに則って分解して整理していくと、「抵抗力(向かい風)」の1つ1つは大したことないことで、ちゃんと向き合えばすぐに解決できたりするんじゃないかと思いました。そういうことを真剣に考えるチームとかあるといいかもしれません。

    人事の超プロが明かす評価基準―――「できる人」と「認められる人」はどこが違うのか

    [itemlink post_id="11322"] Amazonのレビューが高評価だったので読んでみたのですが内容はごく当たり前のことばかり書かれていてあまり面白くなかったです。どの会社にも共通する普遍的な評価の絶対基準、コンピテンシーがあって、いま自分のポジションで求められているものを知っているかどうかが人生の明暗を分けると書かれていて、それはその通りだろうなと思いました。唯一、良さそうと思ったところは評価項目に対して1から5で評点をつけるのではなく、SSからCという評語に変えて

    SS・・・スペシャルすげえ! S・・・すげえ! A・・・ありがとう! B・・・挽回しましょう! C・・・かなり挽回しましょう!

    にすれば自然と社員の意欲がわいて社内の雰囲気も良くなるという部分でした。なぜなら3という評価は「できている、普通」という意味なのに対して、Aは会社が求める水準に達しているので「ありがとう!」という感謝、褒める意味になるからです。評点3って良くも悪くもない、でもどっちかと言うとちょっと微妙な点数扱いだと思うので、これはうちでも取り入れたら面白いかもと感じました。

    ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

    [itemlink post_id="11323"] 読み物として面白かったです。 紀元前からの人類の歴史に伴って人類が持つ組織モデルにも新しいものが都度出現してきたという話は目から鱗でした。いま我々が普通だと思ってる組織(目標や利益を追求する達成型モデル)は比較的最近出てきた組織モデルで、かつ決して最終形ではなく既に次の段階の組織モデルが世界中に現れている、それがティール(進化)組織だという話でした。普段生活してるとついつい目の前の組織課題や解決方法スキルばかりに気を取られますが、俯瞰的に遠目から見ると今自分がいる世界が全てではないという新鮮さを感じました。 ティール組織は一言で言うと従来のピラミッド型組織ではなく社員一人ひとりが主体性を持つセルフマネジメント組織でそこには上司も経営陣もいなくて予算も給料も時にはリストラさえも自分たちで決める、そんな組織なのに社員が何万人もいたりするケースもあるという、にわかには信じられないような事例が次々と紹介されています。 ティール組織が他の組織に比べて優れているという意味で書かれているわけではなく、どの組織モデルも環境や状況によって機能するかどうかが決まるのですが、ティール組織にはなろうとしてもそう簡単になれるものではなく非常に難しいだろうなという感想でした。

    最高の働きがいの創り方

    [itemlink post_id="11324"] 著者の自己紹介、経歴紹介から始まったので、よくある経営者の自叙伝回顧録的な本かと思いきや、すごくいいことがたくさん書いていました。タイトル通り社員が働きがいを持つ方法について実践してきたことが書かれているのですが、精神論ではなく科学的にGPTWという働きがいサーベイで50を超える項目に対して徹底的に分析して社内制度のどの施策が効いている効いていないのかを議論し改善に向けて努力してきているというところに感銘を受けました。主に経営視点で実施してきた施策の紹介ですが、チームレベル、部署レベルでできそうなこともたくさんあり参考にしていけそうです。もちろん経営層の方にもぜひ読んでいただきたい本でした。

    ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略

    [itemlink post_id="11325"] 一章から三章まではIT化を真の意味で推進できない製造業などへ変化を促すような内容でイマイチそそられなかったのですが四章の開発組織の話は興味深く読めました。 ソフトウェア開発の職種にはソフトウェアエンジニア、エンジニアリングマネージャー、プロダクトマネージャー、デザイナー、QAの5つが一般的には必要で、うちの会社の現在の組織で言うところのPOはおそらくプロダクトマネージャーに当たるし、リーダーはこの本ではエンジニアリングマネージャーに当たります。そう捉えた上で読むといろいろ考えさせられるものがありました。 また、組織の型については先日読んだHRStandardにも同じことが書いていて、基本的には組織の型には職種で分ける職能組織(エンジニア、デザイナー、QAみたいな)か、事業で分ける事業主体組織(ZOZOTOWN、WEARみたいな)か、今のようなマトリクス型組織、もしくはプロジェクト単位で集結解散を繰り返すプロジェクトチーム型組織の4パターンくらいしかなくて、それぞれメリデメがあるのでどれがいいと言い切れないところが難しいところだなと思います。

    入社10年分のリーダー学が3時間で学べる

    [itemlink post_id="11326"]

    リーダーの役割について様々な研究や文献、企業事例を紹介しながら説明しています。知識として身につけるべき教養に溢れていました。 例えばマッキンゼーの7つのSと呼ばれる定義では、リーダーの仕事を以下の7つに定義しています。戦略作り、組織作り、制度作り、人材育成、能力開発、自らのスタイルの確立、共有価値観の浸透、です。先日ある知り合いの他社人事と雑談してるときにこのマッキンゼーの7つの定義について説明してくれたことがあって、教養を完全に自分のものにしていると話の深みがすごいなと感じたのを覚えています。 他に面白かった話としてはモチベーションの古典的研究では人がモチベーションを高めるには3つのタイプがあって、成長感を持ち達成することでモチベーションが高まる人、大きな仕事を任されることでモチベーションが高まる人、和やかに楽しくできることでモチベーションが高まる人、がいるそうです。また、モチベーションに関わる因果関係として、目標の高さや目標を自分で立てたかどうか、達成できると思えているかどうか、手応えを感じて成果が報われるのかどうか、報酬など外的要因とも関係があるということで、自分のモチベーションコントロールですら人には難しいものですが、リーダーは人のモチベーションも上手くコントロールしないといけないわけで参考になるなと思いました。

    これからの会社員の教科書 社内外のあらゆる人から今すぐ評価されるプロの仕事マインド71

    [itemlink post_id="11327"] 田端さんの新著読みました。 一言で言うと昭和のおっさんの価値観全開な本なんですが、それでもプロとはどういうことなのか、会社で評価されるためにはどう行動するべきかという社会人になりたての新人に向けた普遍的なメッセージ集になっています。ぼくも20代の頃に先輩や上司から言われまくったことがたくさん書かれていたし、学生から社会人へのマインドチェンジのための本です。ともすれば学生から見たらいらやしいと思うかもしれない、相手の懐に入るためのテクニックや、会社で生き抜くための術みたいなことが書かれています。それと、どんな相手にも敬語をちゃんと使うとか、社外の人を部屋で迎えるときには立って挨拶するとか当たり前の礼儀の大切さについても書いています。田端さん自身は、それらのことを「人として正しいからやる」のではなく「やった方が得だからやる」「損して今後やりづらくなるようなことはしない」なのだという損得勘定が判断基準な人だということがよく分かる本でした。

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