『日本一働きたい会社のつくりかた』と『幸福論』

幸福経営学という研究があるそうです。

その研究によると「社員を幸せにすることこそが会社の目的であり、それを実践していたら利益は自然とついてくる」そんな会社が究極のホワイト企業、つまり幸せな社員はパフォーマンスが高い、幸せな社員は創造性が高い、幸せな社員は欠勤しにくい、幸せな社員は離職しにくい、そういう研究データが蓄積されており、そのエビデンスから幸福経営学の重要さが注目を集めているそうです。

そんな幸福経営学と同様なことを目指しているのが日本最大級の不動産・住宅情報サイトLIFULL HOME'S(ライフルホームズ)を運営する株式会社LIFULLです。 [itemlink post_id="11164"] 最近まで株式会社ネクストでしたが、今後の世界展開を見据えてネクストもホームズも一般的な名前すぎて商標登録が難しいため「あらゆるLIFEを、FULLに」するという意味を込めて社名変更されたそうです。

この本にはLIFULLがモチベーションカンパニーで日本一に選ばれるまでになった理由、これまでやってきた施策が書かれており、全てが真似できるわけではないと思いますが、重要だなと思った点も多く、ぼくなりに抜粋して紹介してみたいと思います。

上の人間も下から評価される仕組み

近年いろんな会社で導入されている360度評価という仕組みは、周りの人全員から会社の行動指針に則った活動ができているかどうかをフィードバックされることですが、ライフルではさらに

経営理念(ビジョン)を伝え、浸透させるために、最も重要なのは経営陣です。社長をはじめとした経営陣が「是」としたものが会社の「是」となりますし、経営陣が評価したことがいい仕事だということになります。

それだけ重要な役割を果たす経営陣がどれだけ行動指針に則った行動ができていたかということを、それぞれの役員が担当する部門の社員が無記名で5段階評価しているそうです。例えば「この役員はビジョンとの一貫性がある指示を出していますか?」という質問に対して「大いに当てはまる」「あてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」「わからない」という選択肢の中から選び、コメントも書き込めるようになっているそうです。

つまり経営陣が普段から従業員との約束を果たしているかをチェックされる自浄作用が存在し、役員が人によって違うことを言っていると現場は混乱するので一貫性を大事にし、その一貫性が企業文化を作っていくということを強く意識しているということです。

360度評価の目的もそうですが、上に立つ人間も下から常に評価されているという緊張感が非常に重要なことだと思います。

心理的安全性の確保

昨今いろいろなところで取り沙汰される、このキーワード「心理的安全性の確保」、心理的安全性とはメンバーが上司や他のメンバーに対して自分の考えや感情を素直に伝えることができ、間違ったことを言ったり反対意見を言ったりしても安全だと感じられる雰囲気のことです。

雰囲気というと流動的な感じがしますが、これこそ文化に近いものではないかと思います。 人は一般的に、意見を言う際、これを言ったら無知だとおもれるのではないかとか、上司に反論したら制裁を受けるのではないかと考え、思い切った意見を言えないことがあります。このような状態は単純に、個人の能力の発揮を阻害しているといえます。

心理的安全性が確保された状態が働きやすい雰囲気のある会社、しいては幸せに働くことに直結するのではないでしょうか。

薩摩の教え

これもいろんなところで聞く話ではありますが、人の価値は以下の順番で決まるという教えがあります。

1.何かに挑戦し、成功した人 2.何かに挑戦し、失敗した人 3.自ら挑戦していないが、挑戦した人を手助けした人 4.何もしなかった人 5.何もせず、他人の批判だけをする人

つまり、この教えは挑戦することが一番大事、たとえ失敗したとしても挑戦した人は批判されることなく、評価されるべきであるということです。これは前述の心理的安全性とも密接な関係があると思います。

何かを提案、前向きに頑張ろうとした人に対して、それが結果的に意味がなかったり、無駄だったりしたとしても、それを決して批判、否定してはいけず、さらなる挑戦を促すことが大事だと思います。なぜなら、その失敗を追求されると、その人は二度とポジティブな挑戦をしなくなるだけでなく、その組織に貢献したいという気持ちすら失われていきます。

そしてその人はいずれやる気を失い退職し、ネガティブが周りに伝染し、働きづらい会社という雰囲気になり退職ラッシュに繋がります。一度そうなると取り戻すのにはかなりの時間が必要になります。

評価者は短期的な視点だけでなく、長期的な価値を評価するべきだと思います。

人格者にはポジションと等級で報い、成果を上げた人間には賞与で報いる

  こんな中国の故事があるそうです。

徳盛んなるは官を盛んにし、功盛んなるは賞を盛んにする

よく野球で一流のプレイヤーが一流の監督になるとは限らないと言われたりしますが、そういう話だと思います。仕事で成果を出した人が昇格し、マネージャーになっても上手くいかないケースは非常に多いと思います。

だから昇給の唯一のルートが昇格であることが昇給制度の不幸であり、昨今の会社では昇格ルートをマネジメントコースとスペシャリストコースに分けることが多いです。

ライフルではリーダーにふさわしい人物として認められるのは、人格者だそうです。 人格者とは、経営理念実現への強い情熱を持ち、会社が重視する価値観を体現し、かつ一般的な倫理観を有する人であり、そういう人がメンバーのモチベーションを高め、チームを機能させることができるという考え方です。もちろん、成果を上げた人材には会社に貢献しているのでポジションではなく賞与でしっかり報いるという両輪の制度です。

幸福論

そして、この本の中でぼくが一番いいなと思ったフレーズは

会社は社会に新たな価値を提供するために存在します。 でも、そのために社員が不幸になるのであれば、私はそれに価値を見い出せません。組織は人を幸せにするためにあります。 そうでなければ、皆で集まって協力する意味がありません

まさに幸福経営学な考え方なわけですが、ぼくも最近幸せについて考えることがあります。

https://twitter.com/sashiharatakuya/status/847829856289042433

人は幸せになるために生きていて、幸せになるために行動し、幸せになるために集まって協力するのであって、どんなことであっても幸せになれないのであれば全く意味がないと思っています。

それこそ幸福学の研究に興味があるくらいですが、どうせ人はいつか死んで、100年もしないうちに誰からも忘れられてしまう存在なのだから、ほとんど全てのことはどうでもよくて、自分の人生でどれだけ幸せを感じることができたか、それが大切だと思います。

だから、組織というのは所属する人を幸せにするための器なんだと思うし、社会で関わる人みんなを幸せにするのが会社のあるべき姿なんだと思う、という読書感想文でした。